2013年 09月 13日
奥歯が、だるいように、痛いような。 |
149回芥川賞の『爪と目』を読んだ。
受賞のニュースを見たとき、
語り手の設定の無理矢理さを聞いて、ちょっとヘキエキとした。
ここまで変わったことをしないと賞は穫れないのかなぁ、、、なんて。
実際に読んでみると、必然、な語り手だった。
たしかに、トリッキーではあるけれど。
日常の怖さと評する人もいるかもしれないけれど、
私にとっては、幸福の怖さだ。
もう少し正確に言い直すと、幸福のイメージの怖さだ。
憧れのダイニングテーブル、清潔なリネン、
北欧の陶器、観葉植物、手作りの甘くないお菓子。
もう一方にある、
爪と、目と、スナック菓子と、マンションの和室の洗濯物。
どちらがいいとか、悪いとかではなくて。
どちらが幸福になれるとか、なれない、ではなくて。
なんだか、そんなイメージに翻弄され復讐されている感じ。
だいぶ前、笙野頼子が芥川賞をとった時、衝撃のような凄さを感じた。
今回は、奥歯が、だるいように、痛いような。
ゆっくり痛さが襲ってくるのを予感しながら待っているような。
こんどこそ、歯医者に行かなければと、少しずつ決意していくような。
私は、この感じが嫌いじゃない。
好みはあると思うけど、おすすめできる本だと思う。
ただ、正しさとか正義とかにご執心だったら、
読むのは止めた方がいい。
きっとイライラするだけだと思うから。
by earlgrey01
| 2013-09-13 18:46